適切な睡眠時間は何時間?正しい睡眠方法とは
「人間にとって適切な睡眠時間は何時間でしょう?」と聞かれたら、皆さんは何と答えますか。こんな言い方をすると身も蓋もありませんが、それは「人それぞれ」です。
ただ、睡眠時間の長短にかかわらず、しっかりとした睡眠の取れていることがもっとも重要です。では、正しい睡眠法とはどのようなことを言うのでしょうか。
Contents
睡眠のメカニズム
正しい睡眠方法について解説する前に、まずは睡眠のメカニズムについて知っておきましょう。脳の働きを知ることで、正しい睡眠が得られやすくなります。
睡眠とは
睡眠は誰もがあたり前のようにおこなうことではあるのですが、いざ定義するとなると意外と難しいものです。あえて定義をするなら、2つの要件があげられます。
1つは、「身体的、および精神的な必要からもたらされる、一時的な意識水準の低下」であり、もう1つが「いつでも覚醒可能である」ということです。
たとえば、鈍器で殴られたり麻酔などで意識がなくなるのは、ここでいう睡眠には該当しないということです。また、アルコールの大量摂取や薬物の乱用などによる昏睡状態も、いつでも覚醒可能であるという要件を満たさないため、やはり睡眠には該当しません。
体内時計の働き
睡眠のメカニズムは、体内時計の働きが司っています。体内時計は脳内にある視交叉上核(しこうさじょうかく)という部分によってコントロールされており、通常であれば夜になると眠くなり、朝になると覚醒するというようにプログラミングされています。
お風呂に入ったあと、身体が冷えていく過程で眠くなる、という仕組みについて聞いたことがあるという方もいらっしゃることと思います。それは、夜になると身体から熱を発して、脳を冷やすからなのです。
また、脳を冷やすのと同時に、ホルモンの一種であるメラトニンが分泌され、その働きによって睡眠に落ちていくのです。朝になると覚醒作用のある副腎皮質ホルモンが分泌され、目が覚めることとなるのです。
日本人の平均的な睡眠時間
日本人の平均的な睡眠時間は、およそ7時間40分だとされています。意外と長いと思われたでしょうか。それとも短いと思われたでしょうか。
昔から「健康ためには8時間寝た方がよい」などと言われますが、8時間ぐっすり寝られるのは10代からせいぜい20代までです。一般的に、睡眠時間は10歳ごとに10分短くなるとされています。
30歳になると平均的な睡眠は7時間を切り始めますし、80代になると6時間を切り始めます。そのため、「お年寄りは早起き」などと言われるわけです。
睡眠異常とは?
睡眠異常に悩まされている人は年々増えてきています。睡眠障害というと「不眠症」をイメージされる方が多いと思いますが、不眠症だけが睡眠異常ではありません。
睡眠異常というと、夜よく寝られない不眠症が代表的です。不眠症には布団に入っても寝付けない「入眠障害」、夜中に何度も目が覚めてしまう「中途覚醒」、朝起きてもぐっすり寝た感じがしない「熟眠障害」、起きるべき時間より2時間以上前に目が覚めてしまう「早朝覚醒」などさまざまなものがあります。
ただし、身体的、および精神的なストレスによる一時的な不眠は、不眠症とは認定されません。少なくとも、1週間に2回は上記のような症状があること、かつ、その状態が1ヶ月以上継続していることが不眠症の要件となっています。
不眠症以外の睡眠障害としては、原発性過眠症、ナルコレプシー、睡眠時無呼吸症候群、精神生理性不眠症、反復性過眠症、特発性過眠症、環境条件に起因する過眠症などさまざまなものがあります。これらに関しては、機会があったらまた別の記事で解説したいと思います。
睡眠が必要な理由
改めて「睡眠が必要な理由とはなんですか?」と聞かれる、答えに窮するのではないでしょうか。通常は「身体を休めるため」という答えが返ってくると思います。もちろんそれも正解なのですが、その他にも睡眠が必要な理由はあります。
脳を休めるため
人間に限らず、大型の恒温動物は進化の過程で大脳を発達させてきました。それによって情報処理能力が格段にアップし、身体操作性も向上したのですが、脳が働くのには莫大なエネルギーを必要とします。そこで、睡眠を取ることで大脳を休息させるのです。
情報整理をおこなうため
睡眠は情報処理と密接な関係があることも分かっています。たとえば動物は、ほかの動物に襲われそうになったとき、瞬時の判断力が要求されます。その判断の準備を、睡眠中におこなっていると考えられているのです。
記憶を整理するため
人間の場合、睡眠中に脳神経のシナプスに変化が起こることで、記憶が強化されることも分かっています。脳の処理能力は無限ではないため、睡眠中に記憶の取捨選択をおこなっているという訳なのです。必要な情報はすぐに取り出せるようにしておき、脳の「メンテナンス」を寝ている間におこなっているのです。実際に、睡眠をしっかりと取ると、知能テストの成績がアップするという研究結果もたくさん報告されています。
その他にも子供の場合、「昼行性の動物としての脳」を育てるために、睡眠が重要視されています。そのため、子供には大人よりも長い睡眠時間が必要なのです。
正しい睡眠方法について
ここまでの説明で、睡眠のメカニズムや睡眠の必要性について理解して頂けたことと思います。では、正しい睡眠を取るためには、どのようなことに気を付けるとよいのでしょう。
眠くなったときに寝る
良質な睡眠を得るためには、生活習慣や食習慣を正した上で、眠くなったときに寝るということが重要です。眠くないときに布団に入ると、「寝なければならない」というプレッシャーを感じ、かえって不眠になってしまうリスクが高まります。
もちろん、夜更かしや寝坊を繰り返している人が眠くなったときに寝ていては、良質の睡眠を得ることができません。あくまでも早寝早起きをして、決まった時間に食事をした上でのお話です。
8時間睡眠にこだわらない
先ほども少し触れましたが、睡眠時間は年齢とともに自然に減少していくものです。そのため、「8時間寝なければならない」というこだわりは捨てましょう。8時間を確保するためにせっかく10時に布団に入っても、眠れなければ焦ってしまうことになります。焦ると交感神経が優位になり、余計に眠れなくなるという悪循環に陥るのです。
1週間スパンで考える
「昨日は睡眠不足だったから今日はたくさん寝よう」という考え方は、かえって睡眠のリズムを乱してしまいます。それよりは、先週は夜更かし気味だったから、今週は早く寝ようと考えた方が効果的です。早く寝るためのコツは、あたり前のようですが早く起きることです。特に、早朝の陽射しを浴びると、体内時計がリセットされるといわれています。
寝具を変える
枕やマットレスが身体に合っていないと、知らないうちに身体に疲労がたまってくることもあります。最近はオーダーメイド枕などもありますので、よく眠れないという方は相談してみるのもよいでしょう。
まとめ
適切な睡眠時間や正しい睡眠方法について見てきましたが、いかがだったでしょうか。8時間睡眠が必ずしも良質な睡眠とはならないことに驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。あなたに合った睡眠法を見つけて、いつまでも健康で若々しく過ごしたいものですね。