睡眠不足と脳|睡眠不足が及ぼす脳への影響は?
人生の1/3という時間を費やす睡眠は、脳にとっても非常に重要な役割を果たします。
皆さんは十分に休むことができていますか?寝不足で困っていませんか?
私は以前、平日の睡眠時間を3時間くらいで頑張っていた時期がありましたが、仕事中ずっと視界がぐるぐる回ったり休みの日は気づいたら夜だったりで散々でした…。
そんな具合でめちゃくちゃ脳みそいじめてた実感があります。
そこで睡眠のメカニズムと、睡眠不足から引き起こされる影響についてお話ししたいと思います。
Contents
そもそも寝ることのメカニズムとは
ノンレム睡眠とレム睡眠
人は、睡眠中約90分のサイクルで2種類の睡眠を交互に繰り返していきます。
脳も体も眠っている睡眠を「ノンレム睡眠」といい、体は眠っているが脳は起きている睡眠を「レム睡眠」といいます。この2種類の睡眠が交互に繰り返されていきます。
眠りについて最初に現れるのがノンレム睡眠です。
この段階では、睡眠全体を通して一番深い眠りに入っており、容易な刺激では起きることが困難です。ここで起こされると頭がぼーっとした感覚になります。
次に眠りについてから約90分後にノンレム睡眠の後、現れるのが最初のレム睡眠です。この段階に特有な、急速な眼球運動が見られます。
夢を見るのは比較的この段階です。
その後、このサイクルが4〜5回ほど繰り返されます。そして、最初に起こるノンレム睡眠はやがて浅く短くなっていき、次に起こるレム睡眠は明け方に向けて出現時間が多くなっていきます。このレム睡眠が、浅く長く持続するときに朝目覚めるのです。
というのが理想的な目覚め方ですね。
少し難しい話になりましたが、ここで重要なポイントは、約90分のサイクルで睡眠が引き起こされているということと、いかに最初の深いノンレム睡眠を質のよい睡眠できるかどうかということです。
睡眠に関係するホルモン「メラトニン」
(構造式って、オシャレよね。)
睡眠に関わるホルモンとして「メラトニン」があります。これは、いつも寝る時間の数時間前に分泌をし、スムーズな入眠に向けて作用していきます。このメラトニンをより分泌させるためには、朝に日光を浴びて分泌されるセロトニンというホルモンが分泌されているということが重要となります。
朝はセロトニン、夜はメラトニンがそれぞれ分泌されることで、よりよい睡眠が促されるのです。決まった時間に寝て、朝きちんと起きて日光をあびるとよいとよく言われるのはこれが関係しているからなんですよね。
そして、もう一つ重要な役割を果たすのが、「成長ホルモン」です。成長ホルモンと聞くと、体を成長させるのではないかと思ってしまいますが、それだけではありません。
疲労回復効果もあるホルモンなのです。ちゃんと大人にも関係あるんですよ。
そしてこの成長ホルモンがよく分泌されるのが、先程お話しした最初の一番深い眠りのノンレム睡眠なのです。朝目覚めて「なんだかスッキリしない」と思うことはありませんか。この深い眠りが十分に行えなかったことが原因の一つとして考えられているのです。
睡眠負債に注意
睡眠不足は脳を破壊する?
最近の研究で明らかになったことがあります。それは、慢性的な睡眠不足が脳を自己破壊してしまうということです。
これは、2017年、イタリアのミケーレ・ベレッシ博士が発表したもので、脳の細胞レベルで睡眠不足との関係性について説いています。
その内容は、一時的な睡眠不足よりも慢性的な睡眠不足の方が、脳の正常なシナプスといわれる神経までも壊してしまうという結果でした。また、食作用をもつ脳のグリア細胞のひとつと言われるアストロサイト、さらにミクログリアにおいても活性化されると報告されています。
つまり、あまり寝れない期間が続くと、脳が自分自身で脳の細胞を壊してしまうということを示しているのです。
はわわ…当時の私、脳細胞破壊しすぎ…?
そこで、最近「睡眠負債」という言葉が使われるようになってきました。借金のように、毎日毎日1〜2時間程度の睡眠不足が重なり気づいた頃には、大きな負債となって体に負担をかけてしまっているという状況に陥ってしまうのです。
睡眠不足は記憶力を低下させる
さて体内には、βアミロイド(アミロイドベータ)というタンパク質があります。
脳内の老廃物と言われているβアミロイドは短期間で分解されるのが普通です。
このタンパク質がたまると脳の神経細胞を破壊するといわれています。脳の神経細胞を壊してしまうため、脳が萎縮し記憶力が低下すると言われているのです。
しかし、βアミロイドがなぜ溜まってしまうのかということは残念ながら明らかにされていません。しかし、溜まったβアミロイドは、睡眠中に処理されるため、日中に増えたβアミロイドはおおよそ6時間半以上睡眠をとらないと返せない借金のように溜まっていく一方となるのです。
週末寝だめはキケン
「仕事が忙しくて寝る時間があまりなかったから、休みにまとめて寝れば良いんじゃない?」
と思っている方はいませんか?
私もその1人でした。お昼ご飯に起きてきて…夕飯の時間までまた眠るという、なかなかにやばい生活を送っておりました。
しかし、朝ごはんも食べずに昼まで寝ている状況は、先程から述べているように日中に分泌や分解されなければならない物質が溜まっていく一方なのです。
週末寝だめをしたとしても、「なんだかすっきりしない」「疲れが取れた感じがしない」と思ったことはありませんか?
私は寝ても寝ても寝足りない状態を感じていました。
生活のリズムが壊れてしまう週末の寝溜めは、実は体に負担をかけてしまっているため、おすすめはできません。
もし、たくさん寝たいという方は、基本の生活リズムを壊さないことが大切です。特に、夜早く寝て朝いつもどおり起きる分には問題はありません。
睡眠不足から引き起こされる病とは
アルツハイマー型認知症
先程、βアミロイドが溜まると脳の神経細胞を破壊するという話をしましたね。
そのβアミロイドは、アルツハイマー型認知症と関連があると言われています。アルツハイマー型認知症とは、脳が萎縮し、脳がうまく機能しなくなることで引き起こされる記憶力低下などの症状をいいます。
その他にも、月日がわからなくなってしまう見当識障害や、言葉がわからなくなってしまったり、話せなくなってしまう失語、ものの認識がうまくいかなくなってしまう失認などの症状もあります。日本の多くの認知症がこのタイプだと言われています。その症状が進行すると、寝たきりなどの状態に陥ってしまうこともあります。
うつ病
うつ病を引き起こす原因の一つに睡眠不足があげられます。
うつ病は、さまざまなストレスが重なり、それがきっかけとなり発症することもあります。すると先程も説明をした、脳のセロトニンの分泌が少なくなってしまいます。このセロトニンは、精神を安定させる働きがあります。
これが少なくなると情報がうまく伝わらず、不眠や、頭がまわらない、気分が落ち込むといった症状が現れるのです。うつ病もアルツハイマー型認知症と同様に、その症状が悪化すると食事もままならず、寝たきりの状態になり、活動することが困難となる場合もあります。
そう、なにをしようにも心が鉛のように重たくて体も動かなくなっちゃいます。
生活習慣病
睡眠不足がきっかけとなり引き起こされる病にはその他に、糖尿病や高血圧、脂質異常症があげられます。これを生活習慣病といいます。
睡眠不足くらいでそんな病気になるなんてなかなか想像できませんよね。特に若いうちはなんだかんだ無茶できちゃいますしね。
睡眠不足によって、生活習慣が乱れ、肥満を引き起こします。そして、肥満が高血圧や糖尿病、脂質異常症を引き起こす原因のひとつとされています。さらに、生活習慣病がやがて、心疾患や脳血管障害を引き起こす事態となってしまうのです。
まとめ
睡眠不足は、脳に大きなダメージを与えます。そして、睡眠不足が続くと、借金のように溜まっていく睡眠負債の状態となり、いつのまにか返せない状態となり自己破産と同じ状況になってしまうのです。
壊れた体は壊れる前よりも確実にスペックダウンします。完全には戻りません。
そうならないためにも、日々その日の疲れをリセットする十分な睡眠が健康でいられるためにも重要となるのです。